『パラサイト 半地下の家族』 で第92回アカデミー賞®4部門受賞のポン・ジュノ監督と『ゴジラ -1.0』で第96回アカデミー賞®視覚効果賞受賞の山崎貴監督。ハリウッド進出も決まっている山崎監督は『ミッキー17』をどう受け止めたのか。アジアを代表する2大監督の特別対談映像が到着した。

最初に口を開いた山崎貴監督は、「ちょっと打ちのめされましたね、僕も次の次の映画をアメリカで撮る事になっているのですが、こんな作品ができてしまうとやたらハードルが高くなってしまって本当に迷惑だなと思いました」と思わず苦笑いする。ポン監督がナチュラルな日本語で「すみません」と笑顔で応じ、興味津々に「次の次に撮るアメリカの作品がどのようなものか気になります。怪獣ものですか?」と問いかける。「怪獣…ではないです。が、大きなVFXをたくさん使う映画になります」と明かすと「ほんとー」というリアクションが!
■『ミッキー17』ポン・ジュノ監督×山崎貴監督 特別対談
ロバート・パティンソン演じる2人のミッキーを描く映像表現と並んで、『ミッキー17』の大きな見所の一つが、大雪原を舞台にクリーパーたちが群れをなす壮大なクライマックスだ。山崎監督は「僕はVFXのオタクなのでわかるのですがアメリカで本当に一流のとてもお金のかかるチームを使って、しかも大スペクタクルシーンがあるじゃないですか。だからそれをホントどうやってやったのか知りたい」と満面の笑顔で尋ねる。「確かにこのVFXの中でも核心の要素となるのが今(山崎監督が)抱いていらっしゃるクリーパーです」とぬいぐるみを指さしたポン監督は、物語の鍵を握るクリーパーについて「ベイビークリーパー、ジュニアクリーパー、ママクリーパーの3種類が出てきますが、ゴジラとミニラのように最も大きな予算が投じられたのがクリーパーでした」と説明、「ゴジラは歴史的な伝統があるスーパースター怪獣ですので、そこから新たなバリエーションを作り出すというのはむしろ難しさもあり悩みもあったのではないかと思います。それとは違い私の場合は何もないところからのビジュアルでしたので、もちろん難しさはあったとは思いますが自由さもあったと思います」と、質感を重視して新たなゴジラを生み出した山崎監督と違ってゼロからの創造は自由度も高かったと強調する。

続けて「今回クリーパーのクリーチャーデザインを担当している方は『オクジャ/okja』や『グエムル-漢江の怪物-』でご一緒した方だったので“あうんの呼吸”で作ることができました。最初の出発点でクリーパーのイメージとして私が出したのはクロワッサンのパンだったのです」と、原作では「ムカデ」と表現されていたクリーパーの誕生秘話を明かした。そして「もし明日の朝ごはんでクロワッサンを召し上がるのであれば是非注意深く見てみてください。特にママクリーパーによく似ています」とユーモア溢れるコメントで笑顔を誘う場面も。
本編を観ることでどんどん可愛さが増していくクリーパーは、「作っている当時は気づかなかったのですがポスプロの段階で見た時に、あーこれは『風の谷のナウシカ』の王蟲(おーむ)に似ているなぁと思ったのです。もしかしたら自分の中に眠っていた潜在的なものが影響を与えたのではと思いました。子供のころから宮崎駿監督の作品は数十回見てきましたから」と敬愛する宮崎監督の影響について言及。『ミッキー17』を鑑賞した観客からも王蟲を連想させるという声が多数発信されているが、観客の代表でもある山崎監督は、「すごいなと思ったのが、普通に見たら気持ち悪いものがどんどん可愛くなっていって…、あれを助けたい!…という気持ちで劇場が一体となる瞬間があると思うんです。それはやはりなかなかできないことです」と、得体の知れない存在であったクリーパーが物語の進捗に合わせてどんどん愛らしくなっていくポン・ジュノ監督の演出手腕を絶賛している。

「『ゴジラ-1.0』では実際に触っているような手触りが感じられるような感覚があったと思います。CGで100%表現するのではなく物理的なエフェクトを使われていると聞きました。53年のクラッシックのオリジナルゴジラの時はデジタルの効果はなかったはずですから、その当時に向けた郷愁のようなものを込めたのかなと思いました」—ポン監督が改めて『ゴジラ -1.0-』の表現を讃えると「予算がなくて手作りでやるしかなかった…」と恐縮した様子で山崎監督が苦笑い。ポン監督からは「クラシックな怪獣を見ていると、着ぐるみの中の演者が東宝のセットで怪獣の頭を脱ぎタバコを一服している姿を一度見てみたいなと、そんなことを想像してしまいます」と思わずほっこりするコメントが飛び出す。
最後に日本の観客に対するメッセージを求められた山崎貴監督は、「社会的な問題も扱っているのですがとにかく面白いんですよ。それがこの映画の何よりの特徴だと思います。ひたすら面白い。ずーっとずーっと、どうなるんだどうなるんだという気持ちを持ちながら最後にすごいところに連れていかれる映画なので、劇場で是非、観ていただきたいです。ちょっと宣伝では伝わってないくらい大スペクタクルがたくさんあるんですよ。だからこの面白さを伝えたいですね。観てくれ、とにかく観てくれということを伝えたいです。ほんと素晴らしい作品です。これが作れて羨ましいし、良かったと思います。是非劇場でご覧ください。」と、劇場鑑賞を大推奨した。
ポン・ジュノ監督は、「観客の皆さんには楽しんで観てほしい、そういう気持ちでずっと作っているんです。正直に言うと、自分自身が楽しめる映画を撮りたい。そんな子供のような気持ちで映画を撮っているんです。最終的にはとにかく観客の皆さんに是非楽しんでいただきたいです。」と、多彩なテーマが凝縮された集大成『ミッキー17』を映画館で楽しんでほしいと結んでいる。
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